H13年2月
酒瓶を片手に何度この石段を登ったことだろう。大江山の麓(ふもと)の寺。みんなキッショウジではなくキッチョウジと呼んでいた。
主は禅僧にして、我らが高校時代の美術の先生。
私は美術学校を卒業して、東京に家のあるライバルたちが、欧州留学へ旅だって行くなか、ここに居候(いそうろう)をしていた。和尚のお陰で頂相(ちんそう)を描きはじめた。
体育会系でない不良たちの梁山泊であり、まるでテレビの青春ドラマのような毎日がそこにあった。昨年、九月号に師の生前葬の模様を書いたがその月、逝ってしまわれた。
(パステル画)